資金繰り表をつけよう!
経営コンサルタントコラム
2016年5月30日
■資金繰り表とは何か
資金繰り表をつけて、資金繰りをきちんと把握することが、倒産の回避につながります。
損益が赤字でも会社は潰れませんが、お金が無ければ会社は立ち行きません。
ここで質問。
そもそも資金繰り表ってどういうものでしょう?
明確に答えられない経営者さんはちょっと勉強不足かもしれません。
成長局面にない経済環境では、経営者も数字が多少はわからないだめです。
さて、それでは単語を分解してみましょう。
資金=お金、これはOKですよね。
繰り=やりくりの「繰り」
なので、「資金繰り」は、お金のやり繰りの意となります。
表とは「複雑な事柄を、見やすいように整理分類して、一目でわかるように書き表したもの。(大辞泉)」ですので、合体させると、
「ごちゃごちゃしたお金のやり繰りを分かり易いようにまとめたもの」
が、資金繰り表ということになります。
言葉の方向からの意味合いはOKですね。
あくまでお金で見る、というのが一番重要です。
儲けとか利益とかとは関係なく、お金だけで考えるというのがミソです。
お金原理主義ですね。
次に資金繰り表の構造について見ていきます。
■資金繰り表の構造
資金繰り表はお金のやり繰り、出し入れ、収入と支払(つまり“収支”ですね)をまとめたものです。
大雑把にいうと、
収入いくら、
支出いくら、
で、いくらいくら残った。
という内容がまとまって記載されているものです。
例えば、売上入金が100円あって、仕入で払ったお金が50円だったら、
収入100円
支出50円
で収支差額50円のプラスとなります。
これが資金繰り表として、まとめて表になっているわけです。
とはいえ、収入やら支出やらの全部をまとめて団子にしてしまうと、後から見たときに、一体何の収入なのか、はたまた何の支出なのか検討がつかなくなってしまいます。
これではせっかく資金繰り表をつけても意味がありません。“つける”のが目的ではなく、“つけたものを利用する”のが目的ですから、後から見てチェックできるようにしておく必要があります。
なので、表の構成も見易い、分かり易いようでできています。
まず、入ってきたり、出ていったりしたお金の別を、大きく経常収支と財務収支の2つに分けます。経常収支は通常の営業活動におけるお金の出入りのことで、財務収支はそれ以外のお金の出入りです。
それぞれの収支をその収入と支出に分けていくと、
お金の収支
|
――――――
↓ ↓
経常収支 財務収支
↓ ↓ ↓ ↓
収入 支出 収入 支出
と、こんな感じになりますね。
これに前日なり前月なりからの繰越しを加味すれば、翌日、翌月の繰越額が明らかになります。
つまり、お金がいくら残っているかを知ることができるわけです。
あとはそれぞれの収入支出の詳細を記載していきます。
■収入と支出の詳細
収入と支出の個別の内容で代表的なものは以下のとおりです。
経常収支
L収入
L売上入金
L現金売上
L売掛金回収
L受取手形期日入金
L雑収入
L支出
L仕入支払
L現金仕入
L買掛金支払
L支払手形決済
L人件費支払
L販売費支払
L支払利息・割引料
L雑支出
L固定資産(現金払)
財務収支
L収入
L手形割引
L定期預金取崩
L借入金
L有価証券売却
L支出
L借入金返済
L定期預金預入
L有価証券買入
この詳細の科目はあくまで代表的なものですので、もっと細かく記載してより明確な内容にすることもできます。(例えば人件費や販売費の内容をさらに区分する等)
■資金繰り表のつけ方
資金繰り表の意味と構造がわかったところで、さて、実際にやってみましょう。前月繰越額は100円です。
入金は全部で2500円ありました。内訳は現金売上500円、売掛金回収1000円、受取手形期日入金500円、借入によるもの500円です。
出金は全部で2000円でした。内訳は現金仕入1000円、買掛金支払500円、人件費支払150円、販売費支払150円、支払利息割引料50円、雑支出50円、借入金返済100円です。
とすると、
前日繰越 100
経常収支
L収入
L売上入金
L現金売上 500
L売掛金回収 1000
L受取手形期日入金 500
L雑収入 0
(小計)2000
L支出
L仕入支払
L現金仕入 1000
L買掛金支払 500
L支払手形決済
L人件費支払 150
L販売費支払 150
L支払利息・割引料 50
L雑支出 50
L固定資産(現金払) 0
(小計)1900
【経常収支差額】100
財務収支
L収入
L手形割引 0
L定期預金取崩 0
L借入金 500
L有価証券売却 0
(小計)500
L支出
L借入金返済 100
L定期預金預入 0
L有価証券買入
(小計)100
【財務収支差額】400
翌日繰越 600
とこうなります。
この表を日々で作ったものを日繰り(ひぐり)表などと言ったりします。
日々の収支およびその予定を記載した日繰り表を作成するのが原則です。
“予定”を入れることが大切です。
■資金繰り表の使い方
日次なり月次なりの資金繰りが横にずーっと連なっていくのが資金繰り予定表になります。この“予定”が大切です。
予定を立てず、記入せずに資金繰りの結果だけ記入して作成しているだけでは、資金繰り表の最もおいしい部分を逃していることになります。
資金繰りは、その予定を立てることで(入出金を予測することで)、お金の不足時期、不足タイミングを事前に察知することが可能となるのが一番の活用の意味です。
人件費はほぼ一定ですし、掛けのサイトは長くて3か月でしょう。家賃なども決まった時期に決まった額が出ますね。売上を予測するのは難しいですが、前年、前月の傾向からある程度読むことはできます。となれば最低でも3か月先くらいまでの資金繰り予定表は作れるはずです。
できれば年単位で作っていただければより安心です。
長く予定を作るとなぜ安心なのか。
「資金不足までのリードタイム」が長ければ長いほど、いろいろと対応策を練り、実行することができるわけで、結果的に資金ショートを回避できることになるのです。なので、資金繰り予定は大切なんですね。
3日後に資金ショートすることが分かっても、銀行からお金を借りるには間に合いませんから。
会社は資金が何より重要です。例え黒字でも資金が無ければ会社は潰れます。
『備えあれば憂いなし』会社を維持・継続するために、資金繰り表をつけましょう。
池田